第一話:バッグの中になぜ枯葉が!?
彼女と並んで歩くとき、僕はいつもバッグを持たされた。
そして、そのバッグは、いつもやたらと重かった。
買い物に行くだけなのに、何がこんなに入ってるんだろう。僕はいつも不思議に思いながら彼女のバッグを持っていた。

「ゴメン。バッグの中のお財布とってくれる?」
ある日そう言われた僕は、彼女のバッグの中をはじめてのぞいた。
携帯、コンパクト、デジカメ、めがねケース、日焼け止め、口紅、、、。あとは名前すらわからない化粧品が、たくさん。
あまりの物の多さと密度で、財布を探し出すのは一苦労だった。
そういえば、着メロが鳴り響くバッグの中を、彼女がゴソゴソと引っ掻き回している姿を何度か見たことがある。
「帰ってバッグの中身出さないの?」
その日、家に帰り着いた僕は彼女に言った。
「なんで?」
彼女は澄ました顔で問い返した。
「汚ねぇじゃん。」
「ふつう、一回一回、全部出すの?」
「出すだろ。」
「うそだー。A型だけじゃない?」
「お前もA型だろ。」
「・・・・。」
「一回、全部出していい?」
「片づけてくれるの?ありがとー!」
こういうところは、末っ子だ。面倒見の良い人間に、何のためらいもなく頼ることができる。
そして、僕は面倒見の良い長男だ。
予想通り、バッグの中からは次々と物が溢れ出した。
携帯電話やデジタルカメラといったデジタル品。山のような化粧品。ハンカチ、財布、手帳、キーケース、どんぐり。
どんぐり?
ようやくバッグの底が見えたと思ったら、どんぐりが3つも入っていた。そしてバッグの隅には、なぜか枯れ葉が隠れている。
空っぽになったバッグを逆さにすると、カサカサになった茶色の葉がヒラヒラと床に落ちた。
黙ってボクの様子をながめていた彼女は、さすがに恥ずかしそうにその枯れ葉を見た。
「なんでどんぐりが入ってるの?」
僕はどんぐりを手のひらに乗せて聞いた。
「どんぐり見つけたら、拾うでしょ?」
彼女は同意を求めるように笑いながら答えた。
「じゃあ、これは?」
僕は床に落ちた枯れ葉を見ながら聞いた。
「わかんない。」
彼女は照れながら、そう言った。

それから何ヶ月かたち、ささいなことが原因で、彼女はボクの元を去った。
12月に入ったばかりのことで、その年のクリスマスは気楽でもあり、寂しくもあった。
それから僕は一人で春をむかえ、夏も秋もあっという間に過ぎた。
僕は相変わらず一人だ。
冬になり、吐く息も白くなってきたころ、一年ぶりにコートを羽織った。
何気なくポケットに手を入れると、コロコロしたものが入っている。
おそるゝ手に取ると、それはどんぐりだった。
しばらくそのどんぐりを見つめたあと、もう一度ポケットに手を入れ、たんねんに中を調べ、ポケットを裏返してみたりしたが、どこにも枯れ葉は入っていなかった。
カサカサになった茶色い葉っぱがボクにとってどれほど大事だったのか。
手のひらの上でどんぐりを転がしながら、バッグから散った枯れ葉を思い出していた。





